1. 趣旨
1)現代における教育関係の環境認識
現代社会の様々な環境変化によって教育は過渡期にあると言われている。
学校法人や民間企業はそれぞれの課題意識のもと、多様な「教育サービス」を生み出しており、教育の受益者はそれぞれの状況に合わせて選択できる社会になりつつある。このような状況の中では、公的私的を問わず従来の教育機関が提供するサービスの有効性が問われている。一方で、現在提供されている「教育サービス」は、講師やサービス提供者による属人性が高い。
このような状況にも関わらず、教育業界を俯瞰して有効な「教育サービス」を見極め、そのポテンシャルを引き出す機関が不在であるため、サービス提供者も教育の受益者もその有効性を真に理解し発展させていくことが難しい状況である。
2)必要な教育サービスの進化
この状況を打破していくため、「教育サービス」を進化させていくための取り組みを行なっているサービス提供者が、環境変化の激しい時代に必要な「教育サービス」のあり方について検討する場を提供し、「教育サービス」の評価、改善、業界標準の再定義につなげていくことが有効かと考えられる。
こうした活動を通して、サービス提供者間のネットワーク化を促進し、資本や業務提携につながるような支援を図ることが可能となる。また、21世紀 に相応しい「教育サービス」を考えるための要素として、認知科学、学習理論、動機付け理論、テクノロジーなどの理解を初め、人文科学、社会科学、自然科学など領域の先端的知識を渉猟し、サービス提供者間で共有していくことで「教育サービス」の発展に寄与する。
対象範囲は、国内に止まらずグローバルとすることで、「教育サービス」のポテンシャルを最大限に引き出すことを目指す。このような活動を通じて、「教育サービス」の標準を再定義し提言していくことで、有効な「教育サービス」のあり方を理解できる形にし、発展に貢献していくことが見込まれる。
3)特定非営利法人が扱うべき教育サービス関連の論点
このような取り組みにおいては以下のような論点に対する見解を醸成していく必要がある。
- 社会は、どのように変化しているのか。
- 希望格差、機会格差、経済格差による教育格差など、様々な格差がある中、全体像はどうなっているか
- デジタライゼーションによる社会変化の影響はどのようなものか
- どの格差に対してどのプレーヤーが取り組んでいるのか
- 変わりゆく社会において、この先求められる教育サービスは何なのか、そしてそれをどのように届けるのか
- 子どもの段階(段階の分け方は、学力・主体性etc)によって、適切な動機付けの仕方は異なるか。どう異なるか
- まだまだ世の中には眠っている才能をより開花させるための手法とは何があるか
- その中で、公教育における教師の役割はどう再定義されるべきか
- そもそも、1)社会が教育のあり方・あるべき姿を規定する、2) 今これまでにないはやさと規模感で社会が大きく変化している、という前提のもと、「教育のendgoal」をどう定義するか。その項目自体の精査 / それをどう教えていくか / どうmeasureしていくか / その結果としてどういう社会が実現されていくのか、など。stakeholderやroadmapの解像度をどう高めるか
- 教育の初期コストと運用コストを誰が負担するのか。以前よりシステマティックかつ大規模に「private companies」がそれを負担する例が出てきている(e.g., Amazon、Guild Education )中 、その流れはどれくらい加速していくのか。=公教育の領域に、民間教育サービスはどの程度浸透していくのか
- 教育サービス業界に携わる人々が関心を持ちそうなテーマとして、シンプルに今後学び方がどう変化していくのか、これからの入試のあり方はどうなるのか
- 現在の時代における学問以外の分野での「日本」の教育の強みやカルチャーはいかせないか
- ここから生まれた知見が多くの民間教育企業で採用され、そこで実践された先進的な教育手法が、公教育に還元される流れをどう生み出すのか
4)特定非営利法人の必要性
今回、特定非営利法人として申請するに至った背景としては、こうした論点や課題の解決に向けて、官民、公私に存在する各種の教育サービスの評価や改善を促す上で、教育サービスの特性に鑑み、中立的な立場で評価することが必要であると考えたためである。また、各種プレイヤーのネットワーク化を図る上でも、個別利害を超えた立場に立つことが必要である。法人化によって、個別利害を超えた組織を確立することができ、教育サービスに関する知見を蓄積して内外に提言を図っていくことができる。また、資金面、人的リソースなどの適切な配分を行なうことができるため、活動の発展を促進できると考えている。
2. 申請に至るまでの経過
令和3年4月 「NPO法人 教育R&Dセンター 準備会」を発足
令和3年5月 特定非営利法人設立のための勉強会を開催
令和3年6月 発起人会を開催し、法人化の意思確認
令和3年9月 第一回設立準備会を開催
令和3年10月 第二回設立準備会を開催
令和3年12月 設立総会を開催